斉藤洋二

ブローデルは16世紀のフェリペ2世時代のスペインに焦点をあてて研究し、歴史を3つの周期でとらえた。つまり歴史というのは、表面的かつ短期には個人や出来事史により成り立ち(短期持続)、中期的には社会の歴史、すなわち人口動態や戦争などにより決定され(中期持続)、そして深層においては自然や環境などにより決定される長期周期運動があるとした。そして、このうち長期持続を最も重視した。 ブローデルの歴史観を現在の日本に当てはめると、短期については様々な出来事の発生によりその傾向はとらえにくいが、中期では少子高齢化の進行、そして長期的に見ればCO2の増加や原発を含めたエネルギー問題など自然・環境の悪化があり、国家の衰退が続いていくことが予測される。 1990年代半ばを境に生産年齢人口が減少に転じ、さらに08年12月に総人口が約1億2809万9000人でピークアウトしてほぼ5年を経過した。かかる人口ボーナス期からオーナス期への劇的変化に加え、巨額の政府債務残高やエネルギー不足など中長期的な経済条件の悪化を見れば、日本経済が低落傾向に入っていることは否定しがたい。73年の変動相場制移行以来続いてきた円高の40年は終了し、今まさに円安への歴史的な大転換期にあると考えてよいのではなかろうか。